マウスピース矯正(インビザラインなど)は、透明で取り外し可能な装置を使うため、目立たず日常生活に取り入れやすい治療法です。しかし、患者さんからよくある質問のひとつに「発音や滑舌に影響はあるの?」というものがあります。結論から言うと、マウスピースを装着した直後は一時的に滑舌が悪くなることがありますが、多くの場合は短期間で慣れ、日常生活に支障が出ることはほとんどありません。
- なぜ滑舌に影響が出るのか
マウスピースは歯全体を覆うため、舌の動きや口腔内のスペースにわずかな変化を生じます。特に影響が出やすいのは、舌先と前歯の隙間を使う「サ行」「タ行」「ラ行」といった音です。発音時に舌がマウスピースに触れることで、空気の流れが変わり、軽く舌足らずに聞こえることがあります。
- 慣れるまでの期間
個人差はありますが、多くの人は数日から1〜2週間程度で順応します。人間の舌や口の筋肉は柔軟性が高く、新しい環境に適応しやすいためです。毎日会話をしたり、音読をしたりすることで慣れが早まります。特に仕事や学校で人と話す機会が多い人ほど、早く違和感が薄れる傾向があります。
- 日常生活や仕事への影響
接客業やプレゼンテーションなど「話すことが仕事の一部」という人にとっては、最初の違和感が気になるかもしれません。ただし、ワイヤー矯正に比べると口の中の異物感は少なく、口内炎や装置による発音障害が起きにくいため、比較的安心して日常生活を送ることができます。また、大切な場面では短時間マウスピースを外すことも可能です。
- 滑舌を改善する工夫
- 音読や発声練習をする:新聞や本を声に出して読むと舌の動きがスムーズになります。
- サ行やラ行を意識する:苦手な音を繰り返し練習することで改善が早まります。
- しっかり装着時間を守る:外している時間が長いと慣れが遅れるため、1日20〜22時間の装着を守ることが大切です。
- 長期的な影響はあるのか
基本的に長期的に滑舌が悪くなることはありません。むしろ歯並びや噛み合わせが整うことで、発音が改善するケースもあります。例えば前歯の隙間や出っ歯が原因で息が漏れていた人は、矯正後に発音がクリアになることがあります。
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まとめ
マウスピース矯正では、装着初期にサ行やラ行など一部の音が発音しにくくなることがあります。しかしほとんどの場合は数日から数週間で慣れ、日常生活に影響はほぼなくなります。さらに矯正が進んで歯並びが整えば、発音がよりクリアになる可能性もあるため、「滑舌が悪くなる」というよりは「一時的に慣れが必要」と捉えるのが適切です。会話や発声練習を積極的に行いながら治療を進めれば、口元も発音もより自信を持てるようになるでしょう。
歯科衛生士.Y